雌性ホルモンがレセプターを介して精巣に作用する場合、必ずmRNAの発現誘導を介したタンパク質の産生を伴う。この、新たに産生されるタンパク質の構造が明らかとなれば、雌性ホルモンの精子形成に対する作用機序を解明するための大きな手がかりとなる。そこで、mRNAの発現量の違いによりcDNAクローンをクローニングする手法であるリプレゼンテーショナル・ディフェレンシス・アナリシス(RDA)法を用い、雌性ホルモンによって精巣での発現が誘導される遺伝子の特定を試みた。その結果、雌性ホルモンエストラジオール17β(E2)の刺激によってのみ精巣での発現が誘導されるウナギ精子形成関連因子(eSRS)34cDNAのクローニングに成功した。このcDNAクローンは全長1711ベースで、アミノ酸にして456残基の予想されるオープンリーディングフレームを有していた。この予想されるアミノ酸配列を基にデータベースによる相同性検索を行ったところ、eSRS34は、ヒトのPD-ECGFに対し56%と比較的高い相同性を示した。 タンパクレベルでのeSRS34の発現解析を行うためにeSRS34の特異抗体の作製を試みたところ、比較的抗体価の高い抗eSRS34抗体を得ることに成功した。 eSRS34がE2の下流で精原幹細胞の再生分裂を制御しているかどうかを予想するために、ヒトの組み換え体(hr)PD-ECGFを培養液に添加し、ウナギの精巣を培養したところrhPD-ECGFは有意に精原幹細胞の再生分裂を誘導した。
|