本年度は、以下の研究を行った。 1)ラット胎子精巣の器官培養 胎齢14日の雄胎子の生殖原基を実体顕微鏡下で摘出し、24穴組織培養プレートにて72時間培養した。培養液は、1%BSAを含むDMEMを用い、MillicellTMの膜上で培養した。この培養系に粗精製したウシインヒビンを添加すると、中腎の形成は正常であるが精巣発育の抑制と生殖細胞数の減少が認められた。一方、エストラジオールの添加は、このような抑制効果は認められなかった。 2)中枢の性分化 視床下部に局在する性的二型核の分化は、「視床下部から分泌される黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)が下垂体へ作用してLHを分泌させ、このLHが精巣へ作用してテストステロン分泌を促進し、このテストステロンが視床下部へ到達して、局所でエスロジェンに変換させて雄性化が誘起される」と解釈されている。本年度は、次の2つの実験を行った。 (1)抗LHRH血清(LHRH-AS)投与実験 雌ラットの生後1〜6日齢まで1日1回LHRH-ASを投与し、その後の発育と成熟時における交尾行動を観察した。その結果、LHRH-AS投与群では、精子形成能は正常と差が認められなかったが、交尾行動に異常が認められた。LHRH-AS投与群では、ペニスの挿入頻度は増加したが観察時間内に射精に至った個体は認められなかった。 (2)エストロジェン及びオクチルフェノール投与実験 雌ラット生後1〜14日まで、1日1回エストラジオールあるいは、オクチルフェノールを投与した結果、膣開口日は促進され、いずれの投与群でも短期間に連続発情に移行した。 以上の結果から(1)ウシ卵胞液中には、精巣発育を抑制する物質が存在する事、(2)エストロジェンは、培養精巣の発育に抑制効果を示さないこと、並びに(3)オクチルフェノールは、性中枢を雄性化するエストロジェン作用を有する等の事実が判明した。
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