内分泌かく乱物質の作用機序の解明を目的として、まず内分泌かく乱物質の真のターゲットを明らかにする為に、アフィニティー精製法を利用したターゲットの精製・同定に着手した。 従来、内分泌かく乱物質のターゲットは、エストロジェンレセプターとされていたが、それだけでは内分泌かく乱物質の多様な影響を説明することは困難である。そこで、内分泌かく乱物質のターゲットが他にも存在するのではないかと考え、内分泌かく乱物質と結合する生体レセプターの探索を行った。 対象となる内分泌かく乱物質としては、現在でも比較的汎用されているフタル酸とトリアゾール系の農薬の1つであるアミトロールを取り上げた。これら内分泌かく乱物質を、われわれの開発したアフィニティー精製用のラテックスビーズに固定化した。アフィニティー精製用のラテックスビーズにはエポキシ基が存在し、目的とする化学物質のアミノ基と反応し化学物質をビーズ上に固定化することができる。そこで内分泌かく乱物質のアミノ酸誘導体を合成し、ラテックスビーズと反応させることにより、内分泌かく乱物質固定化ラテックスビーズを作製した。 この内分泌かく乱物質固定化ラテックスビーズを用いて細胞の抽出液から精製を行い、結合タンパク質の精製を行った。抽出液調整用の細胞としては、子宮頚ガン由来のHeLa細胞を用い、核抽出液と細胞質抽出液をそれぞれ調製し、実験に供した。 その結果、フタル酸を固定化したアフィニティーラテックスビーズを用いた場合少なくとも一種類の、アミトロールを固定化したアフィニティーラテックスビーズを用いた場合には少なくとも五種類のタンパク質が特異的に結合することが明らかになった。現在、これらタンパク質のアミノ酸配列を決定するために試料を大量に調製しており、今後これらのタンパク質をコードしている遺伝子をクローニングし、それらの機能を明らかにしていく予定である。
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