本研究は、内分泌攪乱物質の野生生物に対する影響の野生メダカを用いたモニタリングシステムの可能性を探るとともに、近交系メダカでの内分泌攪乱物質の生物検定システムを開発することを目的としている。本年度は、上記の2つの目的に対応した以下の2つの研究を行った。 1.新潟市周辺でのメダカの分布調査と、外部形態、生殖器官の組織の検索 新潟市近郊の5地点(湖沼2地点、水田脇の小水路2地点、水田への導水路1地点)で、メダカの生態調査を行った。その結果、各地で得られるメダカの性比、外部形態(含、第2次性徴)などには特に異常は観察されなかった。また、これまでの精巣組織の検索からは、精巣卵のような異常所見は得られていない。さらに、採集されたメダカの形態計測に基づく年齢査定を行ったところ、野生メダカの寿命は約1年であること、4月から5月にかけて越年魚が産む子の他に、8月頃に成熟した当歳魚が産む子も越年集団形成に参加していることが明らかになった。 2.近交系のメダカのステロイドホルモン感受性の比較 南日本集団由来のHd-rR系統、北日本集団由来のHNI系統、及びHd-rR系統にHNI系統のY染色体を導入したコンジェニック系統の3つの系統で、胚のエストラジオール処理による性転換を指標として、性ホルモン感受性を検討した。その結果、コンジェニック系統とHd-rR系統の間に顕著な感受性の差が存在することが明らかになった。これは、メダカを生物検定に使用する場合にどの系統を使うかについて慎重な配慮が必要であることを示すとともに、性転換についてのエストラジオール感受性に係わる遺伝子がY染色体上に存在することを示しており、性分化の遺伝的制御機構を考える上でも興味深い知見である。
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