近年、内分泌攪乱物質と呼ばれる一群の化学物質がヒトおよびその他の生物の内分泌系を攪乱することにより、生殖の異常や癌の発症などの原因となっていることが問題となっている。本課題では、内分泌攪乱物質の新規試験法の開発を目的に、簡便にホルモン様作用を測定できるトランスジェニックメダカの作製を行なった。内分泌撹乱作用のうちエストロゲン作用に着目し、エストロゲン刺激に応じてGFP(Creen Fluor escent Protein)を発現するトランスジェニックメダカの作製を試みた。平成11年度において、GFP遺伝子上流にエストロゲン応答配列(ERE)を挿入したレポーターDNAを構築し、培養細胞へのトランスフェクションにより、このコンストラクトが目的通り働くことを確認した。また、メダカ受精卵へのDNA注入法を改良し、効率良く染色体上に外来DNAを挿入する方法を確立した。引き続き平成12年度において、メダカ受精卵へレポーターDNAのマイクロインジェクションを行い、得られたトランスジェニックメダカがエストロゲン刺激に応じてGFPを発現するかどうかについて検討した。様々な方法を用いて調べたが、期待通りの結果は得られなかった。これは、外部から導入された遺伝子はメダカ染色体上のランダムな位置に挿入されるため、その挿入位置によって発現が抑えられるためと考えられた。今後、さらに多くのトランスジェニックメダカを創出して、本研究目的に適した個体を選別する必要がある。また実験途上において、メダカがもともと持っている自家蛍光が問題となることも判明したので、これを克服するため自家蛍光の少ない変異種の検索も合わせて行っていく必要がある。
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