研究課題/領域番号 |
11839016
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研究機関 | 高知医科大学 |
研究代表者 |
静田 裕 高知医科大学, 医学部, 教授 (50025631)
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研究分担者 |
久下 英明 高知医科大学, 医学部, 助手 (70304673)
戸田 勝巳 高知医科大学, 医学部, 助教授 (40197893)
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キーワード | エストロゲン / ノックアウトマウス / 内分泌撹乱物質 |
研究概要 |
申請者等は、エストロゲン合成酵素遺伝子を破壊し、エストロゲン合成のできないマウスを作製した。そして、このノックアウトマウスの内分泌かく乱化学物質の生物センサーとしての有用性を検討した。 本マウスの雌にエストラジオール、合成エストロゲンであるジエチルスチベストロール(DES)、或はビスフェノールA(BPA)を様々な濃度で皮下注射し、子宮に与える影響を組織学的及び分子生物学的に解析した。組織学的解析は子宮標品をホルマリン固定後、切片を作製し、ヘマトキシリン/エオシン染色によって染色した後、光学顕微鏡によって観察した。また、分子生物学的解析のために、上記処理したマウスの子宮からRNAを抽出し、エストロゲンに依存して転写が増強されることが報告されている1)ラクトフェリン遺伝子、2)ロイケミアーインヒビトリー因子(LlF)遺伝子、3)プロゲステロン受容体遺伝子の子宮における発現量に及ぼす影響をノーザンブロット法で解析した。その結果、エストラジオールは投与した量に比例して本欠損マウスの子宮の平滑筋細胞の増殖を促進するとともに、上記エストロゲン反応性遺伝子の転写を増強することが分かった。また、DESはエストラジオールと同程度あるいは、それ以上に強く、しかし、この場合も濃度に比例して子宮に影響を及ぼすことがわかった。一方、BPAは本欠損マウスの子宮の平滑筋細胞の増殖を顕著には促進しなかった。またラクトフェリン遺伝子やLlF遺伝子の転写も促進しなかった。しかし、エストラジオールやDESに比べて弱いながらプロゲステロン受容体遺伝子の発現は顕著に誘導することがわかった。これらの結果から、エストロゲン合成酵素遺伝子欠損マウスは環境に存在する内分泌かく乱化学物質の生物センサーとして十分に利用できることが明らかとなった。
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