研究概要 |
トリブチルスズは貝類ではメスで内分泌かく乱作用(インポセックス)を引き起こすことが確認されているが、哺乳動物に対しても内分泌撹乱作用を示すか否かは明らかではない.そこで本研究では,胎児期から性成熟期にかけての塩化トリブチルスズ(TBTC1)曝露による性的発育および生殖器系への影響について,二世代にわたってラットを用いて検討している.飼育中のTBTC1含有濃度によって5ppm群,25ppm群,125ppm群の三群を設定して実験を行った結果,生殖毒性として説明できる影響(出産成績の不良(メス),生殖臓器重量・副生殖器重量の減少(オス・メス),精子数の減少(オス),性周期の規則性低下(メス)など)に加えて,生殖毒性では説明できない影響(授乳期初期のメスでの肛門性器間距離の伸長,オス・メス間での行動学的性差の消失)も認められた.授乳期初期のメスでの肛門性器間距離の伸長およびオス・メスの行動学的性差の消失は貝類で見られるメス貝のオス化と符合するものであるが,これが内分泌かく乱作用によるものかどうかについては,現時点ではまだ判断できない.さらに内分泌的評価,生殖臓器の病理組織学的評価などを行い,検討を進める予定である.また,投与されたトリブチルスズおよびその代謝物の臓器分布についても現在分析を進めているところであり,これはトリブチルスズのヒトへの影響についてのリスクアセスメントを行うに際して貴重なデータになるものと考える.
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