研究概要 |
内分泌かく乱物質(ビスフェノールA,BPA)の免疫系に対する効果について検討した。 [方法]種々の用量(0,0.01,0.1,1mg/0.1ml/mouse)のBPAを8-9週令DBA/1J雌マウスに抗原hen egg lysozyme(HEL)での免疫時から1日1回14日間経口投与した。また、BPAを雄雌交配後7日から35日間雌マウスにBPAを連日経口投与し、生後8-9過令マウスをHELで免疫した。免疫後21日に、IFN-γおよび抗HEL IgG2a血清抗体(Th1反応)、IL-4および抗HEL IgG1抗体(Th2反応)をELISA法で測定した。また、脾臓細胞中のCD4およびCD8陽性T細胞数をFACScan flow cytometerで測定した。 [結果]成熟マウスにBPAを投与することによって、Th1反応は用量依存的に増加し、1mgBPA投与によって100-200%の増加率がみられた。また、BPAはTh2反応に対しても促進作用を示したが、その効果はTh1に対する効果よりも弱く、1mgBPA投与によって20-40%の増加率を示した。胎児期および母乳期間に1mg BPA暴露を受け、成熟した雌マウスは、Th1およびTh2反応に対し、それぞれ約100%および30%の促進を示した。また、これらマウスにおける脾臓細胞中のCD4およびCD8陽性T細胞数は対照と比較して、それぞれ15-20%および60-70%増加した。 [考察]BPAは免疫系、とくにTh1反応およびCD8陽性T細胞増殖に対し促進的に作用すると思われる。このBPAの免疫系に対する効果が、本物質のエストロゲン様作用、すなわちエストロゲンレセプターを介したものであるかについては現在検討する必要がある。
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