研究概要 |
内分泌かく乱物質のTh1、Th2自己免疫反応に対する影響について検討した。 [方法]実験動物としてはDBA/1Jマウスを用いた。自己免疫反応を誘導するため、100μgの軟骨構成成分であるII型コラーゲン(type II collagen,CII)をアジュバント(CFA,LPS)とともに注射免疫した。Th1反応の指標としてCII免疫動物の脾臓細胞によってCII存在下in vitroで産生されるサイトカイン(IL-2,IFN-γ)およびTh1細胞依存性の抗CII抗体(IgG2a)産生、Th2反応としてTh2サイトカイン(IL-4,IL-10)およびTh2細胞依存性の抗CII抗体(IgG1)産生をELISA法によって測定した。また、CII特異的な脾臓T細胞の増殖反応を3H-thimidineの細胞内取り込みによって定量化した。内分泌かく乱物質として、エストロゲン受容体と結合可能な種々の用量のビスフェノールA(BPA)を免疫時から1日1回14日間経口投与した。 [結果・考察]BPA投与によってCII特異的T細胞増殖反応は促進した。このことから、BPAの免疫増強作用が示唆された。また、BPA投与群において用量依存的なIL-2,IFN-γおよびIgG2a抗体産生の増大がみられた。このことは、BPAのTh1自己免疫反応促進の可能性を示している。さらに、BPAはIL-4,IL-10およびIgG1抗体産生を促進したが、その程度はIL-2,IFN-γおよびIgG2a抗体産生の場合よりも小さかった。したがって、BPAはTh1およびTh2自己免疫反応の両方を増強すると思われるが、Th2よりもTh1反応に対してより強い促進作用を有していると考えられる。
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