研究概要 |
外因性内分泌かく乱物質は内分泌系のみならず、自己免疫系に対しても影響を与える可能性がある。したがって本研究では内分泌かく乱物質暴露の自己免疫疾患モデルであるコラーゲン関節炎(CIA)に与える影響およびそのメカニズムについて検討した。実験動物としてDBA/1Jマウスを用いた。CIAを誘導するため、100μgの軟骨構成成分であるII型コラーゲン(typeII collagen, CII)をアジュバント(CFA)とともに注射免疫した。Th1反応の指標としてCII免疫動物の脾臓T細胞によって産生されるTh1サイトカイン(IL-2,IFN-γ)分泌およびTh1細胞依存性の抗CII抗体IgG2a産生、Th2反応としてTh2サイトカイン(IL-4,IL-10)分泌およびTh2細胞依存性の抗CII抗体IgG1産生をELISA法によって測定した。マウス雄雌の交配直後から、妊娠、出産、母乳期間までの6週間、母親マウスにビスフェノールA(BPA,0.001〜1mg)を経口投与したところ、子マウスにおける関節炎発症率および重症度は促進した。また、経口トレランス誘導はBPAによって有意にブロックされた。このとき、脾臓および腸管免疫組織におけるCD4およびCD8陽性T細胞数は増加し、抗原特異的抗体およびIL-2,IFN-γ産生は促進した。また、BPAによってIL-4,IL-10およびIgG1抗体産生も促進されたが、その程度はIL-2,IFN-γおよびIgG2a抗体産生の場合よりも小さかった。これらの結果から、BPA暴露によってCIAのような自己免疫疾患は影響を受けると思われる。そのメカニズムとしてはCD4およびCD8陽性T細胞増殖、Th1およびTh2細胞によって産生されるサイトカインの亢進によると思われるが、Th1細胞により選択性があると考えられる。
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