研究概要 |
妊娠17日目のマウスおよび妊娠150日目のニホンザルにbisphenol A(BPA)を投与し、30分-1時間後には胎盤、胎仔の血清、肝臓、脳、子宮、精巣にBPAが到達していることを確認した。妊娠中にdiethylstilbcstrol(DES)あるいはBPAを暴露したマウスでは、高濃度のDES投与群では不妊であったが、BPAや低濃度のDES投与群では正常に妊娠出産した。DESに暴露したマウス胎仔では、生殖腺付属器官におけるHoxa-9、a-10の発現が低下した。妊娠11-17日目にDES 0.02,0.2,2μg/kgとBPA.2,20μg/kgを投与し、仔に対する影響を見たところ、雌においては、BPA 20μg群と、DES処理の全実験群で膣開口日が有意に早くなり、その時点の体重は有意に軽くなった。出生直後の雌マウスにDES3μgを5日間投与したところ、2日齢から3日齢にかけて、アポトーシスを伴う、尿道腔から膣への癒合が起きた。尿道下裂の臨界期は生後7日であることを確認した。BPAでは高濃度でも尿道下裂は起きなかった。出生直後のDES投与群ではすべてのマウスが連続発情を示し、BPA投与群では一部のマウスが連続発情を示した。BPAは高濃度であれば新生仔の生殖器官に対して不可逆的影響を及ぼすことを確認した。 水系環境におけるエストロゲンの影響を調べるため、海産メダカであるマミチョグ(Fundulus heteroclitus)を用い、受精卵からエストロゲン曝露を行った。その結果、形態異常、骨形成異常、性分化率の変化及び生殖腺の異常が引き起こされた。エストロゲン受容体(ER)alphaおよびbeta型のクローニング及び、ERmRNAの発現解析を行った。FTZ-F1、Ad4BP/SF-1遺伝子のクローニング及び、各器官における発現の解析を行った。ゼブラフィッシュの性分化を調べ、雌から雄化に至る過程で、卵母細胞のアポトーシスを認めた。
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