研究概要 |
ダイオキシン受容体(AhR)は、hsp90と複合体を形成して細胞質に存在するが、ダイオキシンが結合すると速やかに核内へ移行して種々の遺伝子発現を誘導することにより、その生物学的作用を発揮する。すなわちAhRの細胞質-核間移行制御機構の解明は、内分泌攪乱物質の細胞内メッセンジャーとしてのAhRの作用を明らかにするために重要である。本年度の研究では、AhRの核内移行および核外移行に対する分子シャペロンおよびコシャペロン(hsp90,hsc70,p60,hsp40,p23)の作用について検討し、以下のことを明らかにした。 1.Green fluorescent protein-AhR融合タンパク質およびhsp90,hsc70,p60,hsp40,p23を、細胞内および核内に共発現させた実験系を構築し、AhRの細胞内局在を観察した。その結果、hsp90,hsc70,p60およびhsp40を核内に過剰発現させた場合、AhRの核内への局在が増加した。 2.AhRのリガンド依存性核内移行速度は、hsp90,hsc70,p60,hsp40およびp23の細胞内および核内過剰発現によって影響されなかった。 3.リガンド除去後のAhRの核外移行は、hsp90,hsc70,p60およびhsp40の核内過剰発現によって抑制されたがp23よっては影響されなかった。 以上の結果から、AhRの核内局在は、核内hsp90,hsc70,p60およびhsp40によって制御されている可能性があることが明らかになった。AhRはこれらの分子シャペロンおよびコシャペロンを介して他の核内受容体、情報伝達系タンパク質とクロストークしていることが示唆される。
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