研究概要 |
生体内ホルモン動態に介入することによって生体の恒常性の維持、生殖、発達あるいは行動に影響をあたえる内分泌かく乱物質の神経系への関与について、ウシ副腎髄質細胞を用いてカテコールアミン動態を調節している受容体、イオンチャネル、トランスポーターへの影響について検討した。 ビスフェノールA、17β-エストラジオールは細胞内への[^3H]ノルアドレナリン取り込みを濃度依存的(1〜100μM)に抑制した。ビスフェノールAによる抑制はKm(ミカエリス定数)を変化させずにVmax(最大反応速度)の減少を示す非拮抗阻害であった。17β-エストラジオールによる抑制もVmaxの減少による非拮抗阻害であった。細胞膜への[^3H]デシプラミンの結合実験において、17β-エストラジオールはKd(解離定数)の増加を示す拮抗阻害を、ビスフェノールAはKd,Bmax共に変動する阻害を示した。ビスフェノールAはニコチン様アセチルコリン受容体刺激、電位依存性Naチャネルや電位依存性Caチャネルの活性化によるカテコールアミン分泌を細胞内へのNa^+,Ca^<2+>の流入阻害を介して、濃度依存的(10-100μM)に抑制した。ノニルフェノールによる長期処理はニコチン様アセチルコリン受容体刺激、電位依存性Naチャネルや電位依存性Caチャネルの活性化によって引き起こされるカテコールアミン分泌を細胞内へのCa^<2+>の流入阻害を介して、濃度依存的(10-100μM)に抑制した。タモキシフェンはノニルフェノールと同様のカテコールアミン分泌抑制を示し、ノニルフェノールによる抑制作用を阻害しなかった。 内分泌かく乱物質はイオンチャネル、トランスポーターをエストロジェン受容体を介さずに阻害することによりカテコールアミン分泌、再取り込みを抑制し、交感神経系の機能を修飾する可能性が示唆された。
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