研究概要 |
今年度は、各種核内受容体とGAL4のDNA結合領域(GAL4DBD)とのキメラプラスミドの構築を完成した。これらのプラスミドをGAL4-Luciferaseレポーター遺伝子(GAK-Luc)およびコントロールプラスミド(pRL-SV4,pRL-TK)とともに培養細胞(tsA201)に導入し、各種漢方薬生薬成分および化学物質ピスフェノールAを添加してレポーター活性(ルシフェラーゼ活性)の変化をルミノメーターにて検討した。 その結果、培養細胞系において、いくつかの生薬に、エストロゲン受容体(Erα)、ビタミンD受容体(VDR)、PPARγに対して、疑似リガンドと成り得る成分が含まれている事が明らかになった。これらはいずれも培養細胞系において用量依存的にレポーター遺伝子の活性を上昇させた。これらの生薬成分に関してこれらに含まれる既知の化学物質について更に検討を加えて、内分泌作用を示す物質を同定する。このことは漢方薬の生薬成分にいわゆるpytoestogen(植物エストロゲン)様作用を有する成分が含まれている可能性を示すのみならず、種々の核内受容体に対して作用しうる成分が含まれている可能性を示唆するものである。 一方甲状腺ホルモン受容体に対しては、甲状腺ホルモンに対してアンタゴニスチックに作用する生薬成分が存在した。またビスフェノールAはこれまで知られている、エストロゲン作用に加えて、甲状腺ホルモン受容体に対してアンタゴニスチックに作用する可能性が示唆された。
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