研究概要 |
1 プラトンにおいて、よく生きるということがもつ重要性と、そのための生きる指針探求の道としてのロゴスの中での考察(すなわち、哲学)の意味を、彼の著作『パイドン』と『国家』に探った。 (1)『パイドン』については、善原因の探求の必要性が語られはするが、けっきょくそれは棚上げされ、イデア原因説に取ってかわられる、とする解釈が一般的である。しかし実際には、善原因は棚上げされておらず、むしろ善き生を支える思想-魂の不死・不滅性の思想-を支えるものとして積極的に採用されていること、そしてその善原因を探求する道として、ロゴスの中での考察が重要な方法として採用されていることを確認する。その成果は、The Methodology of the Second Voyage and the Proof of the Soul's Indestructibility in Plato's Phaedo'として、Oxford Studies in Ancient Philosophy,XVIII(2000)に掲載されることになっている。 (2)『国家』については、善のイデアに関する3つの比喩は、プラトンが善のイデアについて理論的な説明を行なうものであるよりはむしろ、各人が善き生を送るべく、善とは何かを探求し、善のイデアに近づく探求のプログラムを示すものであることを確認、「プラトン『国家』における三つの比喩と善の探求-506D8-E4の解釈-」、名古屋大学哲学論集(黒積俊夫先生退官記念論文集)、2000年(印刷中)の形で著わした。 2 その他、ヘレニズム時代の実生活と哲学の関係については、セクストス・エンペイリコス『学者たちへの論駁』第1〜第6巻の翻訳を続行している。
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