研究概要 |
日本における乳児期の育児の特徴を明らかにするために、文献的検討を行った後、2組の母と子(生後5ヶ月)の相互交渉について1日5時間、計3日間の観察と母親へのインタビューを行った。これまでの国際比較研究の結果、日本の母親について、乳児が母親に注意を向けている時は、声をかけたりあやしたりする対人的反応が多く、周囲の事物に注意を促すなどの環境的な働きかけは少ないこと、乳児の微笑、泣き、発声などの情緒的表出に対しては、体に手をやるなどの身体的な接触による反応が多く、表情や言語による情緒的な応答は少ないことなどが報告されてきた。これらは、親の方が子供の気持ちを推し量って反応する結果であり、たとえばこちらを見ていれば"あやしてほしいのだろう"と先回って考える"察しの文化"に根づくのではないかと考察されてきた。一方、西洋文化圏では、生後3,4ヶ月に、養育者が子供をなだめるひとつの方法として、なんらかの不快な対象に向けられている彼らの注意を別の環境的な刺激にそらさせるというより直接的な方略がある。今回、日本の母子の相互交渉を分析した結果、乳児からの泣き、発声などの働きかけに対し、母親は身体的接触のみを行い、環境的な働きかけによる応答は観察されなかった。 なお比較文化的な実験的研究については準備中である。
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