今年度は、臨床心理学の教育モデルを具体化していく段階に入った。昨年度の研究を踏まえて日本の教育訓練モデルの可能性を検討した結果、アメリカ合衆国よりもイギリスの大学院教育が日本の状況に近いことが判明した。そこで、10月の初旬に英国を訪問し、臨床心理学およびカウンセリングの大学院における教育担当者と会合をもち、意見交換及び情報収集を行ってきた。そこで判明したのは、臨床心理学の基礎をアセスメントとするか共感とするかによって方向が大きく変化することである。 イギリスでは臨床心理学とカウンセリングが分離して発展しており、全体の統合ができていない。日本の臨床心理学の現状を分析研究した結果、日本の場合、目標は臨床心理学となっているが、実質的にはカウンセリングに近い実践が行われている。そこで、イギリスの状況を参考にしながら日本独自の教育訓練モデルを形成していく必要があることが明確となった。 その点について研究会を開き、議論した結果、日本のこれまでの伝統からは共感的カウンセリングを基礎におき、そのうえでアセスメントの技能の教育をすることが好ましいとの結論になった。また、今年度の研究を通して明らかになったのは、臨床心理学が各学派に分かれていることが問題であり、教育訓練プログラムを構成していくためには臨床心理学の統合と、その基礎となる共通要素を明確化していく必要があるということになった。 以上の研究成果は、「臨床心理学誌」と「臨床心理士報」に論文として発表した。
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