研究概要 |
研究代表者である清水は、脳性マヒ児の動作不自由の改善を目的に臨床心理学の視点から開発された臨床動作法のなかから、特にタテ系動作法という重力対応姿勢を促進する技法を用いて、被験者の姿勢指導を行った。 健常成人を被験者とし、座位姿勢・膝立ち姿勢・立位姿勢という重力に対応せざるを得ない姿勢の保持課題および各姿勢における屈曲と伸展という動作課題を用いた。 これにより被験者は、まさに自分の身体が床面に対し足の裏から頭頂部にいたるまで(立位姿勢の場合)、まっすぐにタテになったという実感を体験することが内省により確認された。 またこの体験は、自分の中に一本の軸ができたようだという実感によって表現される種類のものでもあり、自分が今まで体験したことのない落ち着き感や,どっしり感、気張らないで楽に姿勢を保持していられる感じを味わうといった内省が得られた。 このような内省が得られたときの、被験者の座位姿勢,膝立ち姿勢、立位姿勢の変化は、側面と正面,背面からビデオ記録され画像処理された。 被験者が心理的に実感するこの体験は、姿勢指導という身体体験から導かれたものであり、この実感が得られた際の身体運動学的、骨格的変化は画像処理により胸部や腰部の反りや屈の状態が減じていることが明らかになった。 しかし、被験者が感じる心理的身体軸と、画像処理から得られる客観的身体軸必ずしも一致するものではないことも明らかになった。 今後、筋電図等運動生理学的指標は、研究分担者である宇部が測定し、心理的身体軸と,客観的身体軸との関係が明らかになるようなさらに適切な指標を特定することになった。
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