平成11年度、本研究においては、第一に、曖昧な過剰な多様性を含み込むNPO概念、具体的には、ミクロ経済学者達の制度選択モデルにおけるNPO定義とサラモン等を中心としたジョンズ・ホプキンス・グループによるNPO定義を取り上げ、批判的に検討した。そして、ボランタリー・アソシエーション論や市民社会論を踏まえつつ、NPOにおける中心部分を「社会的使命」を軸とした自発的連帯を核とし、課題の複雑化・長期化のために継続的な事業経営を行うようになったボランタリー・アソシエーションの発展形態と捉えた。そして、この部分を「市民社会」を基盤とした「市民事業組織」(市民セクター)とうい言葉で表現した。 第二に、春・夏の長期休暇を利用して、神戸市における災害救援・コミュニティ形成・高齢者福祉に携わるNPO/NGOについてヒアリング調査を行った。この調査において、被災地のNPO/NGOが、震災直後から被災者の生活に寄り添いながら、現場の知識(local knowledge)を蓄積してきたことがよくわかった。特に、阪神高齢者・障害者支援ネットワークというNPOにおいては、仮設住宅の住民の生活に入り込んでいって、彼等との信頼関係を築きながらニーズを的確に見つけ出し、これからの超高齢社会においても適用可能なケアの実践知を生み出している。これらの事例をもとに、今後、ショーンによる「反省的実践家」概念等も検討しながら、既存の専門知とは異なる<市民的専門性>の理論化を試みることにしたい。
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