1990年代初頭のソ連邦崩壊に伴うヨーロッパの国際情勢の変化を背景に、成人教育の分野でも東西のイデオロギーによる壁がなくなり従来とは異なる発想による新しい「成人教育学」の理論構築が行われている事実に着目し、その現状把握のために文献調査を実施した。文献収集においては、インターネット等も活用しEU欧州委員会、欧州評議会、北欧閣僚理事会の資料を中心に収集した。 また、研究代表者がこれまでに参加したユネスコ教育研究所等との国際共同研究で築いた人的ネットワークを活用し、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、スロベニア、エストニア、ロシアの成人教育関係者に、電子メールによる質問ないし訪問調査を行い、各国で導入されている新「成人教育学」の特色、それにもとづく実践の特色を明らかにしようとした。 その結果、北欧で発展している民主主義と市民性の育成のための新しい「成人教育学」の理論と実践が、成人教育の分野における国際協力の展開とともに中・東欧の旧社会主義諸国に広まりつつあることが明らかになった。
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