研究概要 |
本研究では,1990年代初頭のソ連邦崩壊に伴うヨーロッパの国際情勢の変化を背景に,成人教育の分野でも東西のイデオロギーによる壁がなくなり,欧州統合を目指すEUが中心となり,従来とは異なる発想による新しい成人教育の理論構築が行われている事実に着目し,(1)EUが新しい「成人教育学」の体系化を構想した政策的背景,(2)新「成人教育学」とこれまでの成人教育理論との相違(理念,方法論を含む),(3)新「成人教育学」による実践の特色(成人教育指導者養成・研修における活用状況を含む),(4)新「成人教育学」の普及の状況(国際教育協力事業としての東欧・旧ソ連邦地域への波及を含む)を具体的事実に即して明らかにすることを目的とした。 今年度は、以下を行った。 1.EUの成人教育・生涯学習関連事業に関し、平成11年度に収集した資料の分析を行い、EUの助成を受けた国際共同研究により新しい発想による成人教育学が生まれている事実を明らかにした。 2.スロベニア、ハンガリー及びエストニアにおいて収集した成人教育学関連の資料ならびに北欧民衆アカデミーの中・東欧・ロシアの成人教育者に対する研修事業に関する資料の分析を行い、市民性を重視した北欧型の成人教育学の理論と実践が、民主化を進め、拡大EUへの加盟を目指す東欧諸国に普及しつつあることを明らかにした。 3.最終成果を公表するために、平成13年2月に国立教育政策研究所において公開ワークショップを開き、オーストリア・グラーツ大学成人教育センター長のウエルナー・レンツ教授を講師として招き、ヨーロッパにおける新しい生涯学習政策の展開のなかで、成人教育学がどのように発展しようとしているのかについて、意見交換を行った。
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