研究課題/領域番号 |
11871065
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
鈴江 璋子 実践女子大学, 文学部, 教授 (20052623)
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研究分担者 |
熊倉 朗子 実践女子大学, 文学部, 助手 (00327751)
宇田 朋子 聖徳大学, 短期大学部, 助教授 (80279611)
小柳 康子 実践女子大学, 文学部, 教授 (70259175)
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キーワード | 女性の職業 / 女性の自立 / 自己実現 / 看護 / ユニテリアン / ギャスケル / 献身 / クリミア戦争 |
研究概要 |
平成12年度は日本ギャスケル協会との提携のもとに日本ギャスケル協会第11回大会においてシンポジウム「エリザベス・ギャスケルにおける女性の自立と職業」を行うことに第一の目標を置いた。 シンポジウムにおいては「看護・介護」とヒロインの再生がテーマの一つとなった。ヴィクトリア朝中期の英国においては、中流以上の家庭の主婦はいわゆる「職業」を持たないのが普通であり、女性に開かれている職業は家政婦、洗濯婦など、低次のものがほとんどだった。「看護」「介護」も初期には娼婦に近い最低の肉体労働と考えられたのだったが、クリミア戦争時のフローレンス・ナイティンゲールの活動によって、女性の近代的な職業へと変化したのである。ギャスケルは『ルース』において、看護を他者への献身という、「罪ある女」の自己救済の手段として、さらにその職業に内在する慈愛と母性を強調するものとして描いた。逆に『シルビアの恋人たち』においてはヒロインは痴呆となった母親を介護する姿で周囲の好感を得るとともに、自己の自由を縛る結果を招く。さらに、見る影もない傷病兵となった夫をそれと識別できず、介護する機会を失い、「許されることなく」若死にしてしまう。表面的には女性は「家の中の天使」であるべき、とされた時代であったが、ギャスケルは同じユニテリアンの伯母が女性慈善協会を設立するなど現実に社会活動をしていたために、生活者としても、宗教者としても、女性の自己実現の重要性と可能性を認識し、作品に描き得たのである。シンポジウムは好評を得、『ギャスケル論集』第11号への執筆が依頼された。年度後半はコンピュターネットワーク、ギャスケル・フォーラムによって、外国人研究者と活発にディスカッションを行った。 小柳研究員は渡米しM.L.A.会議に出席して、アメリカの多くの女性学研究者と意見を交換し、多大な成果を得た。
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