研究概要 |
本研究は「行為の空間的位置づけ」に関わる問題点について検討することを目的とする.中心となるのは,二つ以上の事物が関与する出来事を表す文に伴う位格の項指向性(位格が二つの事物のどちらの位置を表しているか)の問題である.今年度は以下の作業を行った. 1.昨年度に引き続き,日本語の例文をもとに,位格(場所を表す「で」格)の項指向性を決定するメカニズムの大枠に関して考察し,次のような結果を得た. 位格の項指向性を決定する要素として,次の6つが考えられる. (1)行為にかかわる事物自体の特徴(有生物およびそれが位置する場所は焦点を当てられやすい),(2)位置づけの基準点としての場所自体の適性(位置が固定しているなど,位置づけに適したものは位格として現れやすい),(3)事物と場所との位置関係(行為の際に場所を占有する事物およびその場所は焦点を当てられやすい),(4)行為と事物の関係(行為によって状態変化・位置変化を受ける事物およびそれが位置する場所は焦点を当てられやすい),(5)行為と場所との関係(行為の際に新たに,必要上設けられる場所は焦点を当てられやすい),(6)発話意図と場所との関係(発話意図からの推論によって特定の場所に焦点が当てられる場合がある). この6つの要素が相互にどのような関係にあるかは,引き続き考察する必要がある. 2.映像を用いた実験については予定より遅れ,今年度は実施できなかったが,若干の予備作業を行った.
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