本年度は、引き続き、少年法の基本的目標と犯罪被害者が抱えるニーズ充足の両立可能性を、ADR型の紛争処理手続きの応用可能性という観点から検討し、同時にその現実的機能化の可能性を探るため数名の犯罪被害者に対しインタビュー調査を実施した。 また、同時に構造的に似てはいるが、原因において性格がことなる医療過誤被害者の意識と紛争処理ニーズについて、比較対照のためインタビュー調査を行った。 その結果、一見、応報的な報復感情に見える被害者側の心理的コンフリクトの表出も、実は一定の規範的考慮を背景に秘めており、刑事司法システムとも少年司法システムとも異なる対面型の手続きフォーラムを整備することで、報復的コンフリクトをむしろ将来へ向けた被害者・加害者双方にとって建設的な問題克服を提供できるのではないかとの展望を得た。ただ、刑事犯罪被害者の場合には、医療事故以上にそこには困難が存在し、それゆえ、こうしたADR型の紛争処理手続きの少年事件処理への適用については、その限界をも的確に見極めておく必要があると思われる。その意味では、こうした刑事和解的なADRについても、少年司法手続きに代替するものとしてではなく、それを保管するシステムとして一定の機能分担を担う形で構成する方が現実的であるかもしれない。 最終年度である次年度は、こうしたシステムが実際に作動している米国でのヒアリングをも含め、さらに経験的な調査を充実させていくとともに、とりあえずの理論的なまとめを行っていくことにしたい。
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