平成12年度の研究では、日本の法領域における言語の実態の把握に行った。まず、言語が争点となった判例を、群馬弁護士会や群馬県警や前橋地方裁判所で聞き取り調査を行った。外国人の刑事裁判の通訳に関する問題(通訳人の確保、適正な通訳等)が多く挙げられた。一方、通訳人の側からは、日本語の特性からくる通訳自体の難しさや法律用語の難解さなどが問題点として存在する。実際に、法律用語は難解だけではなく恣意的に使用されることがありうる事例(and/or)を、アメリカの判例からもみれる。そこで、「不正競争防止法」から日本の法令用語の特色について、文法、語彙、琴音から考察し、「Legal Japanese Viewed Through Unfair Competitioin Prevention Law」という論題でウェールズで開催された「言語と社会心理学会」で発表した。 言語が関与する判例は、通訳問題のみに限ることではない。類似商標の認定方法も言語が大きく関わる問題である。日本の商標裁判の判断基準をアメリカのと比較してまとめ、これを本年7月に開催される国際学会(LSA/RCSL合同大会)で、「An Analysis of Confusion Determined in Japanese Trademark Cases」という題目で発表する予定である。さらに、言語学からの判断基準のモデルを提起する発表を、 「A Schema Model of Judges in Trademark Disputes」という題目で、第5回国際法言語学会で発表することになっている。 平成13年度は、本研究のまとめとして司法関係機関の実態調査を行いたい。
|