研究概要 |
本年度は、昨年度に構築した、世代交代モデルによるn人非協力ゲームのフレームワークにおけるモデル分析の結果を踏まえ、このモデルに投資機会を導入することによって、動学的な所有権生成の可能性について、環境パラメーター(人口、生産技術等)との関係においてモデル分析を行なった。なお、自然状態は、私的所有権を前提としないホッブス的なそれを仮定し、所有権については、国家による保護によって成立するものとした。内生的な国家生成については社会契約によるものとし、成立過程はinstitutional arrangementによるゲームモデルを用いた。また、解は、subgame perfect Nash Equilibriumを用いた。主要な結論は以下の通りである。 結果:投資の収益率が、ある一定の範囲にあるときには、投資の収益に関する所有権の保護を目的とする国家が、全ての期において、全員一致原則の下で成立する。この水準の上限以上のときには、国家は、時間を通じ、交互に成立と不成立を繰り返す。何れの場合においても、国家の成立によって、経済はパレートの意味で、より効率的になる。 この結論は、従来の静学モデル(one shot game)による国家成立・発展に関する研究結果を、動学的フレームワーク拡張するものであり、興味深いものであると考えられる。以上の研究成果は、ワーキングペーパーとしてまとめられた(千葉大学経済学会ワーキングペーパー#00E027)。 上述のワーキングペーパーを、Neil Wallace教授、James Jordan教授(共にPenn State University)、Yong Yoon教授(George Mason University, Center for the Study of Public Choice)に示し、意見の交換等を行なうことによって、今後の研究の方向について貴重な知見を得たことを付記しておく。
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