本年度は、日本で2回、ポーランドで1回の現地調査を行った。また日本の総務庁の家計調査報告のオリジナル・データの入手可能性の可否の確認のため、東京に2回の出張を行った。まず日本の地方勤労者世帯の消費・貯蓄の意志決定パターンの確認のため、富山県と広島県で3軒の家庭訪問を行い、長時間の聞き取り調査を行った。これは結婚以来のライフ・ヒストリーに沿って、日本経済の諸局面に応じた家庭の経済行動を確認するものであった。同様に山形県米沢市においても、農家・商店・準公務員・旅館業など幅広い階層を対象に8軒の調査を行った。調査時間はいずれも3ないし4時間にわたり、1日に1軒が限界であった。サンプル数は少数であるが、濃密な情報が得られた。ポーランドでは、平成12年度に実施予定の現地調査のための予備調査ならびに調査打ち合わせを行った。また相当数の統計情報を収集した。特に述べておきたいことは、家計の内情に踏み込む調査のため、日本でもポーランドでも外国人による調査という形式をとることが、極めて効果的であったということである。ポーランドでは研究代表者が日本人であるので、都合がよいが、米沢市では、東京在住のポーランド人社会学者に調査協力と同行を依頼し、そのポーランド人による調査であるような雰囲気のもとで調査を行ったが、非常に有効であった。調査結果の分析は、平成12年度の調査結果と併せて、平成12年度に分析を行う予定である。暫定的結論としては、通常の所得・資産要因よりも、家庭的環境の方が消費と貯蓄に大きな影響を及ぼしているということである。また地方都市の場合、バブルとその崩壊は顕著な影響を及ぼしていないことも分かった。研究成果で平成11年度中に発表されたものはない。
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