地方自治体の行財政改革は避けて通ることのできない緊急の課題になってきた。ほとんどの自治体で住民ニーズに応えるだけの財源を確保することができなくなり、裁量行政から選択行政への変換が強く求められているからである。選択行政では、行政の意思決定プロセスを明確にし、その内容を積極的に情報開示して、住民への説明責任を果たし、住民からの行政への参画を求めなければならない。 しかしながら、その一方で、わが国にはこうした行財政改革を推し進めるための改善改革のツールがほとんどない。歳出削減や公共事業の見直し、自治体職員の能力向上など、行財政改革を達成するための大義名分はいくらでも存在するが、そのための具体的な実現方式を、明確に指し示すことのできる研究者もほとんどいないのではないだろうか。 本萌芽研究の目的は、行財政改革に不可欠なツールとして認識されている発生主義会計、あるいは企業会計方式を、現行の地方自治体における財務会計制度に導入する際の問題点を解明しようと試みている。現行の会計方式では現金主義で認識された歳出を測定することができても、発生主義で認識されるコストを測定することはできない。 コストを計算することができなければ、外部委託等の具体的な手立てを講じることも困難である。今年度は、このことを念頭に、わが国で発生主義会計の導入に積極的な大分県臼杵市の事例を中心に、行政コスト計算における論点の解明に努めた。発生主義の視点から、財源についてもコストと期間比較可能な形で認識することで、臼杵市の取り組みは多くの示唆を私たちに提供してくれているのである。
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