本研究では、研究のフィールドとして、企業間の関係やそれらと消費者との接点としてもっとも観察の対象として相応しいと考えられる中心市街地における商業集積に焦点を当てて研究を進めることとした。というのも、中心市街地におけるコンプリクトは、形式知としては捉えにくい現象にあふれており、暗黙知と言われる関係が多々みられるからである。中心市街地の活性化にあたって、共同の取組としてカード事業、中でもデビッド・カードに注目が集まっている。こうした取り扱いをめぐり、さまざまな問題が生じている。こうした動きを総称して、顧客の囲い込みという活動としての捉え方がある。初年度は、顧客の囲い込みと中心市街地の活性化における諸種のコンフリクト問題の解明を検討した。ここで得られた知見としては、以下をあげることができる。わが国で囲い込みという表現は、一企業が生産・マーケティンク・物流をすべて自社で囲い込むことを指してきた。それだけに、顧客を囲い込むという考え方は、顧客を固定化して一定の枠の中から出さないという印象を与えてしまう。しかしながら、現代の顧客の囲い込みに求められているのは、オープンな経営資源の統合であり、旧来的な概念のまま形式的なリストラだけに取り組むような硬直化した組織には不向きであると考えられる。つまり、マーケティングの世界には相変わらず企業からの情報提供に固執していて消費者との間で情報の共有化が図れないままでいる企業群と、情報創造を育むオープンな関係作りを目指す企業群という二極分化が起きているのである。後者にあっては、可変な企業間関係の構築、すなわち、顧客の要望に応じて、協カしあう企業のタイプも変えられるような柔軟なリレーションシップが求められている。
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