近年、わが国の景気の低迷もあり、各企業は、これら新規産業への進出を目指した新規事業展開をどのように行っていくかが、経営の最重要課題となっている。しかしながら、企業の新規事業戦略を考える上で基礎となる「新規産業の創出過程」については、ほとんど明らかになっていない。そこで、本研究では、「新産業の創出過程」に焦点をあてた分析を計画している。近年のイノベーション・プロセスは、古典的な線形プロセス(Linear Process)として議論することはできない程に多面性を持っており、非線形なプロセス(None-linear Process)として捉えることが必要である。この多面性を捉えるために、新産業の創出過程を異業種間競争という視点から分析し、従来の新産業分析に欠落していた要素を整理し、再統合することにより新たなイノベーションプロセスを提示することを目的とする。 研究成果としては、二年度にわたる研究によって、多くの産業において、多角化が行われており、異業種間競争が進展していることが定量的に示された。また、特に新規産業とされている環境産業あるいはファインセラミックス産業においては、近年、異業種間の競争が進展していることが定量的に明らかになった。さらに、事例分析によって、多くの技術革新が異業種間競争というプロセスによって実現されていることを示した。すなわち、本研究の成果によって、異業種間競争という非線形的なプロセスによって、新産業を創出するような飛躍的な技術革新が起きていることを明示することができた。
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