企業が経済活動を行うことによって環境問題が生じてしまう原因は、われわれ自身が作り上げてきた経済システムが、経済活動の基盤である環境を捨象し、その価値を適切に認識し得なかったことによるものであった。この部分を認識するにあたって、会計こそがこの失われた環境価値を既存の枠内に取り入れることによって、環境コストを内部化し、環境に配慮した経済活動を促進することに貢献することができると考えた。また会計学は特に経済学の影響下に研究が進められてきたこと、また、経済学を基礎にもつ研究方法が会計学で認められるようになってきていることをふまえて、経済学の基礎的思考を改めて検討し、環境会計を考えるにあたっての1つの手がかりを得ることを試みた。 その上で環境会計を考察する場合には、既存の財務会計と、それに縛られない環境報告書という場において、それぞれにふさわしい環境会計を論じ、また、相互の関連を明らかにした上で、それぞれが役割を果たすことで、全体として様々なレベルの環境コストやその他の情報を包含した環境会計の1つの体系を示すことができるのではないかと考えた。 財務会計領域における環境会計では、財務会計領域における環境会計の役割と位置づけを明らかにした上で、具体的に会計処理、開示するにあたっての論点と課題を示し、また、実際の会計処理、開示の実態について検討した。環境報告書における環境会計では、財務会計の枠組みにとらわれない環境会計の開示手段として注目されている環境報告書において環境会計をどのように位置づけるのかに関して、環境報告書のフレームワークを明らかにした上で、その中の情報としての環境会計のあり方、対象とする環境コストの範囲、環境コストの評価、環境コストとベネフィットの考え方について検討し、さらに、実際に企業の環境報告書で開示されている環境会計の事例を研究した。
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