研究概要 |
K3曲面に作用する有限群と散在型有限単純群の一つであるMathieu群が関係することは向井によって示されており、このことはK3曲面のオイラー数が24であることと、Mathieu群が次数24の表現を持つことに関係している。一方、散在型有限単純群で最大位数を持つモンスターはMathieu群を含んでいる。K3曲面とモンスターとの関係を見いだしモンスターを調べることが本研究の着眼点であった。本年度の研究成果は次の通りである。 上で述べた向井の結果は複素数体上定義されたK3曲面に対しての結果である。これを正標数の代数閉体上定義されたK3曲面に作用する有限群の場合に拡張を試みた。この試みの中で次のK3曲面の例を見いだした。このK3曲面は正標数特有のもので、超特異K3曲面と呼ばれるものであり、42個の非特異有理曲線を含んでいる。この42個の曲線は21個の互いに交わらない曲線の組に分けられ、2組の間の関係は4個の元からなる有限体上の射影平面の21個の点と21本の直線の間の関係と同じものである。実際、このK3曲面は射影平面の非分離的2重被覆として記述もでき,射影変換群PGL(3,F_4)が自己同型として作用している。この例は向井の結果が正標数ではそのままでは成り立たない例を与えている。この構成には階数24の特別な格子であるLeech格子の幾何学を用いている。Leech格子の自己同型群としてMathieu群を含む散在型単純群Conway群が構成されるが、この例は任意標数で考える場合、Mathieu群よりConway群を考える方が自然であることを示唆している。今後、この方向で研究を続け、散在型単純群とK3曲面の幾何との何らかの関係を見いだしていく予定である。
|