研究概要 |
今年度は、ウェブ図に関連する次の2つの成果を得た。 1.結び目補空間の補空間に双曲構造が入る,すなわち負の定曲率空間の構造が入るとき,この補空間の体積とジョーンズ多項式とのあいだにある関係が期待されることを明らかにした。ジョーンズ多項式はコンツェビッチ不変量から定まるものであり、コンツェビッチ不変量はウェブ図を用いて定義されているものなので,ウェブ図と双曲体積の間に関連があることになる。この研究の目的はウェブ図を用いて幾何的空間の新しい研究手段を構築することであったが,体積という計量的な不変量がウェブ図と関連することがわかり,ウェブ図が微分幾何的な性質の研究にも有用なことがわかった。 2.タングルと呼ばれる結び目の図の一部分を切り出した図に対応するウェブ図の対称性について,次数の低い場合について詳しく解析した。この応用として,結び目の有限型不変量が互いにミュータントになっている2つの結び目を区別するためには,少なくともその次数が12以上でなければならないことを示した。ミュータントな結び目とは,2ータングルと呼ばれる。4つの足のある2つのタングルを2通りの方法で組み合わせてできる2つの結び目のことである。ミュータントな結び目はいろいろな意味で大変よく似た結び目であることが知られているが、有限型不変量の観点からもこのことが確かめられた。
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