研究概要 |
ウェブ図とは,経路積分の理論に出てくるファインマン図のようなもので,ある種のグラフに可積分性に対応する条件を課したものである。コンツェビッチはウェブ図の空間に値をとる結び目の不変量を定義し,申請者は大槻等とともにウェブ図の空間に値をとる3次元多様体の不変量を定義した。これらの不変量と,結び目や3次元多様体の量子不変量との関係を見ると,リー群やリー環,量子群などといった空間の対称性を記述する代数系,特にその非可換な代数構造についての普遍的な性質を,ウェブ図の空間がもっていることが期待される。このウェブ図の性質を代数的手法により明らかにするというのが本研究の目標であった。 これに対し,本年度はハイゼンベルグ代数というもっとも基本的な有限次元可解リー環を用いた表現について研究し,古くから知られていた結び目のアレキサンダー多項式がウェブ図とハイゼンベルグ代数との組み合わせで記述されることを示した。従来より単純リー環による表現よりジョーンズ多項式などの量子不変量が記述できることは知られており,また,アレキサンダー多項式がホイールと呼ばれる円周から何本かの線がでているウェブ図と対応することも知られていたが,ハイゼンベルグ代数との組み合わせで,これらの事実をリー環論の立場から説明できるようになった。 アレキサンダー多項式の一般化についてのある種の極限から結び目補空間の双曲体積が求まることが期待されており,この成果は,一般化されたハイゼンベルグ代数を用いることでウェブ図と双曲体積との関係がつくことを示唆している。
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