研究概要 |
2次元結び目の解け予想を解くには、補空間の基本群が無限巡回群のとき、その滑らかな2次元結び目が自明な結び目と微分同相であることを示せばよいことが知られている。そこで、まず4次元空間内の閉曲面は、その補空間の基本群が自明ならば、カスプによる2重点の発生および消滅のみを許した変形で自明な埋め込みにつながることを示した。また、このように4次元空間内の2つの曲面がカスプ同値ならば、安定同値つまり適当にハンドルをいくつか曲面に付け加えると微分同相になることが分かる。 次に、4次元空間内の曲面のカスプによる2重点の発生,消滅のみを許した変形を高さ関数を固定して調べた。カスプしかないため、2重点の高さの軌跡は後戻りをしない線分となる。セルフ図形およびセルフ図形と2重点の高さの軌跡との交わりを変形していくと、その交わりはセルフ図形の自明な結び目側の平行線部分でのみ起こるようにできることが示せた。これらの段階の解析にあたっては、パリでのシーベンマン教授等との討論が役に立った。またここまでは局所的な変形の積み重ねであり、3次元空間への一般的な射影を用いて詳しく調べることによって明確になったことも多く、グラフィックス表示が有効であった。この先はいよいよ球面であることの特殊性を用いる必要があり、現在は問題点の整理までを行った段階である。 一方、関連して曲面や3次元多様体から平面への写像がいつ4次元空間への埋め込みにリフトするかといった問題が研究分担者佐伯等によって詳しく解析された。また、球面の埋め込みを用いた手術を他の曲面を用いた手術で実現できる場合があるなどの指摘が研究分担者佐伯・寺垣内等によってなされた。
|