研究概要 |
コンパクト非負曲率アレクサンドロフ空間の頂点(尖った本質的特異点)の数の精密な評価は,本研究計画の一つであった.これについて,6月のOberwolfach研究集会において,Guijaro氏(Madrid)からの指摘で,既にPerelman氏(St.Petersburg)が結果を得ていることが分かった.しかしこれを大きな契機として,最大の頂点数をもつコンパクト非負曲率アレクサンドロフ空間の等長類の分類が得られた.来年度中に論文を完成する予定である.この結果に関連して,正曲率をもつコンパクト・アレクサンドロフ空間の頂点数の精密評価,また最大頂点をもつそのような空間の分類などが次の課題となった. 曲率が下に有界な3次元コンパクト・アレクサンドロフ空間において極小曲面を構成することを今年度の第一目的としていたが,6月のグロモフ氏(IHES)との議論により,当初研究計画通りアレクサンドロフ空間のリプシッツ同相写像の変形理論を少なくとも3次元において構築することが必要である,との確信をもつに至った.古典的プラトー問題に対するDouglas-Morreyの解法が,どの程度アレクサンドロフ空間に対して適用可能かを探求したが,この問題は出発点において上記のリプシッツ同相写像の変形理論と密接に関係するため,来年度以降の地道な研究計画の継続が必要である.
|