研究概要 |
グラスマン多様体の間のRadon変換を考察することにより,Gelfandの一般超幾何関数が,自然により拡張して統一的に理解できることが,研究代表者により解明されていた。 今年度の研究では,Radon変換の変形を考察し,そのうちのあるクラスは良い性質を持つであろうという予想を実証する具体的な結果を得た。 n次元空間の中のk次元部分空間の全体を(n,k)-グラスマンと呼ぶ。これは,実数体上,複数体上,四元数体上の3種類が定義でき,一般線型群のある実型の退化系列表現を実現する多様体となる。p+q=n,p′+p″=p,q′+q″=q,p′+q′=kを満たす非負整数を考える。(n,k)-グラスマンには,(p,p′)-グラスマンと(q,q′)-グラスマンの直積体様体が自然に部分多様体として入っており,その全体のパラメータ空間は(n,p)-グラスマンとなる。この直積部分体様体上での積分をtwisted Radon変換と定義すると,それは(n,k)-グラスマン上の関数の空間から(n,p)-グラスマン上の関数の空間への積分変換となる。 q′=0の場合は既に知られており,さらに特にk=1の場合がGelfandの超幾何関数に対応するRadon変換となる。今年度の研究で,k=2,q′=1の場合を考察した。これは2つの射影空間の直積の上での積分となり,twisted Radon変換の核やその像を特徴づける微分方程式系が具体的に分かった。ここで使われた新たな手法は,従来のRadon変換にも適用でき,証明が簡略化でき見通しの良いものとなった。今後は,逆変換の研究や,より一般の場合の考察が期待できる。
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