研究概要 |
ナビエ・ストークス方程式の時間大域的な古典解の存在は、与えられた初期データーが小さい場合に得られている。しかし対象となる領域Ωは、これまでの研究では次ぎの場合に限られている。 (i)Ω=R^n,n【greater than or equal】2 (ii)Ω=R^n_+,n【greater than or equal】2 (iii)Ω⊂R^n,n【greater than or equal】2内部または外部領域 そこで,問題となるの領域の境界∂Ωが非コンパクトである場合である。研究代表者は以前、小川卓克氏(九大・数理)との共同研究で、Ω⊂R^nでn=2,3のとき∂Ωが一様にC^3-級の非コンパクト曲面であれば、時間大域的な古典解が存在することを証明した.本研究においては,同様な結果がn=4,5においても成り立つことを示した.非コンパクトな境界を有する領域の問題の困難さは,線形ストークス作用素AのL^p-理論が存在しないことにある.従って,この場合はL^2-理論の枠組みで,どの程度までナビエ・ストークス方程式を取り扱えることが出来るか?という問題に帰着される.時間大域解の存在には,解u(t)のL^n-ノルム‖u(t)‖L^nのt→∞の減衰を示さなければならない.ストークス作用素の分数べきA^αをL^2で考察した場合,解u(t)に対してシャープな減衰評価が得られるのは‖A^αu(t)‖L^2,0【less than or equal】α【less than or equal】1/2に限る.ソボレフの不等式を考慮すれば,α【less than or equal】1/2の情報から,‖u(t)‖L^nの減衰を得ることが出来るのはn=2,3であることが分かる.n=4は丁度臨界ケースである.そこで,本研究では,さらに‖Au(t)‖L^2の減衰を捻出し,n=4,5に対して成立する埋蔵定理L^n⊂W^<2,2>を用いて時間大域的古典解を構成した。
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