研究概要 |
双曲系境界値問題を特異摂動極限として捉える数学的枠組みを構成する第一歩として、流体力学及び電磁気学に現れる2つの特異摂動問題について、以下の考察を行った。 1.圧縮性ナビエ・ストークス流の非粘性極限 a)線型化ナビエ・ストークス流の非粘性極限として線型化オイラー流を捉える枠組みを次の手順で示した。 i)多重スケール変換を用いた漸近解析により,線型化ナビエ・ストークス流の適切な近似解を内部線型化オイラー流と境界層におげる線型化プラントール流の和として構成した。 ii)近似解の誤差項の一様評価をエネルギー法により示した。 以上の結果の一部分は11欄にあげた論文において公表した。更に,この論文の議論をより簡明に改良した結果を,本年度香港において開催された国際研究集会で発表した。 b)a)で得られた結果を本来の非線型流に対して展開する為の考察を,共同研究者であるZ.Xin氏(クーラント研究所教授及び香港中文大学教授)と行ない以下の問題点を明確にした。 i)非線型問題における境界層の支配方程式として圧縮性プラントール方程式が導出される事をa)で用いた漸近解析により確かめた。しかし,この方程式に対しては,解のある高階微分のア・プリオリ評価の欠如により,時間的局所解の存在さえソボレフ空間において示す事は困難に思われる。 2.マックスウェル方程式に対するある特異摂動問題 全空間でマックスウェル方程式を考え,ある領域外で電気伝導率を無限にする特異摂動極限を考える事により,完全導体壁境界条件を導出する数学的問題設定を行なった。また,形式的計算により境界層方程式を導出した。
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