本研究は、各種ある有機物半導体について、これらをセンサーとして用いた放射線検出器を試作する。これらのサンプル検出器にレーザー光やベータ線を照射し、出力電荷信号を測定し、S/N比などの量を求める。これらの量を比較検討して、各種ある有機物半導体の中から放射線検出器のセンサーとして適しているものを探す。また、半導体の電導率や電極の材質など検出器の性能に影響を与える量について、最適化することを目的としている。 本年度は、各種ある有機物半導体の中から、ポリピロールやポリチオフェンを選択した。電解重合装置を製作して、これらのフィルムを合成し、電極を取り付けて放射線検出器のセンサーとした。このセンサーサンプルに対して、半導体であることを確認するために電気的特性の測定を行った。最初に室温で電流・電圧特性曲線を測り、暗電流の大きさからセンサーフィルムの電気伝導度を求め、このフィルムが半導体領域の低効率を持っていることを確認した。また、暗電流の温度依存性を測定し、フィルムが半導体的温度依存性(高温で暗電流が増加)を示すことを確認した。 次に、このセンサーにストロンチウム90からのベータ線を照射して、電流の増加を確認し、ベータ線誘起電流の大きさを測定した。また、市販のフォトダイオードについても同様の測定を行い、これをキャリブレーションに用いて誘起半導体センサーの電荷収集効率を求めた。これより現在のセンサーの効率はフォトダイオードと比べて同程度以下であることが解った。 本研究は、当研究室にある半導体計測用マイクロプローバー装置、YAGレーザー装置、PCを用いたオンラインデータ取得システムなどの既存の設備を活用しながら行っている。現在は、センサーサンプルに高利得の増幅器を取りつけ、バイアス電圧をかけて、各種強度・波長のレーザー光を照射したときの、出力信号の探索を行っている。
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