研究概要 |
静的磁気相関関数S(q)(q:波数)は磁性体のスピン動特性を理解する上で重要な量のひとつであり、磁気的な動的構造因子S(q,E)を励起エネルギーEに対して積分することによって得られる。本研究は高エネルギー磁気励起をもつ物質に対して、パルス中性子を用いたS(q)の厳密な測定方法を開発するものである。高エネルギー加速器研究機構中性子科学研究施設(KENS)に設置されたチョッパー型分光器において、S(q)の測定方法を開発し低次元磁性体の単結晶試料を用いて測定を行った。まず、単色中性子により一次元反強磁性体CsVBr_3のS(q)に成功した。INCでは、検出器群が散乱角を連続的にカバーしていることに加え、パルス中性子により高エネルギー励起を測定できること、及び、データ解析上で中性子散乱断面積に現れる運動力学的因子や温度因子の補正が正しく行なえることのために、高い励起エネルギーをもつ系における静的相関関数を厳密に測定することが可能である。CsVBr_3のS(q)の関数形を解析することにより、逆相関長が温度に比例するという理論に一致する結果を得た。また、白色中性子により二次元反強磁性体Rb_2Co_cMg_<1-c>F_4の静的相関関数の測定を試みた。低次元系では、白色中性子回折実験で結晶軸の方向を適当に選ぶことにより、波数一定の条件で散乱断面積のエネルギー積分を自動的に行なうことができる実験配置が存在することを示し、Rb_2Co_cMg_<1-c>F_4で測定を試みた。その結果、この系においてすでに報告されている結果にコンシステントな結果を得た。
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