研究概要 |
静的磁気相関関数S(q)(q:波数)は磁性体のスピン動特性を理解する上で重要な量のひとつであり、磁気的な動的構造因子S(q,E)を励起エネルギーEに対して積分することによって得られる。本研究は高エネルギー磁気励起をもつ物質に対して、パルス中性子を用いたS(q)の厳密な測定方法を開発するものである。昨年度はパルス中性子源に設置されたチョッパー型分光器を用いたS(q)の測定方法を開発し、低次元磁性体に対して測定を行なったのに対し、今年度はパルス中性子源に設置された逆転配置型分光器を主に用いてS(q)の測定を行なった。また単結晶試料を育成し研究をすすめた。一次元磁性体CsCrC13は古典的に振舞うことが予想される系であるが、この系についてS(q)を測定したところ、S(q)はローレンツ型の相関関数で記述できることがわかり、逆相関長が温度に比例し、古典論に従うことを明らかにした。また、CuGeO3やRbNiC13一次元磁性体についても同様に、S(q)の温度変化を測定した。RbMn0.31Mg0.69F3は磁性原子濃度がパーコレーション濃度である3次元磁性体であり、臨界散乱にフラクタル性が反映されることが予想される。逆転配置型分光器を用いてS(q)を測定したところ、相関関数は低温でローレンツ関数のべき乗の形で表わされ、その指数は系のフラクタル次元の関数として記述されることを明らかにした。
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