研究課題/領域番号 |
11874054
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
八木 駿郎 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30002132)
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研究分担者 |
笠原 勝 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (30001697)
辻見 裕史 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (20113673)
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キーワード | 量子揺らぎ / ソフトモード / ブリルアン散乱 / ラマン散乱 / 強誘電体 / 同位元素誘起相転移 / アイソトープ効果 / SrTiO_3 |
研究概要 |
本研究の第1段階としてフォノンをプローブとして量子揺らぎの実態を捉えるために、量子常誘電体として知られているSrTiO_3(以下でSTOと表す)の酸素原子を、自然界に存在する^<16>Oから安定な同位元素^<18>Oに置換することで得られる結晶SrTi^<18>O_3(以下STO18)の強誘電性相転移におけるフォノンの異常をブリルアン散乱とラマン散乱分光法で調べた。量子揺らぎの振動としての実態を調べたのち、第2段階においてパルスによる位相制御を試みる。試料結晶は東工大応用セラミクス研究所のM.Itohらにより提供された。 ブリルアン散乱では、c軸方向に伝わる縦波c33モードと横波c44モード(いずれも正方晶系における結晶軸による)のブリルアンスペクトルが観測され、その温度依存性が誘起強誘電性相転移点近傍で測定された。その結果(1)誘電測定により同定された相転移温度(22K)よりも高温において(25K)弾性異常が不連続に現れ、それに引き続いて(2)温度が相転移点に近づくにともないc44モードがソフト化する、ことが判明した。またラマン散乱により、正方晶(量子常誘電体)においてラマン不活性なソフト強誘電モードが、転移点以下の強誘電相において対称中心の喪失によるラマン活性化することを利用して、強誘電相におけるソフトモードの観測を行った。その結果、(3)ハイパーラマン散乱等で確認されている常誘電相におけるソフト強誘電性モードの転移点以下でのハード化は見られず、その温度依存性は少なくとも均一系としての結晶における2次相転移の様相を示すものではなかった。 これらの結果、STOは均一系として扱うことが出来るが、STO18に対してはマイクロクラスターの存在を考慮する必要が示唆された。これは今後の研究方針に対して、貴重な指針となる事実である。
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