木星の衛星「エウロパ」は、表面の氷地殻の下に液体の水の層が存在する可能性が高いことが探査機による磁場観測から明らかになってきた。このように氷と水の2層構造の形成理由は観測からはまだ解明されていない。このような2層構造が安定に存在できるための条件を明らかにすることを目的に、室内モデル実験と数値モデル実験を並行して実施した。室内モデル実験は、一20゜Cの冷凍庫で行われた。水を完全に凍らせた後、下方から加熱して徐々に氷を溶かせると、ある一定の厚さの割り合いで氷と水の安定な2層構造が形成されるが、加熱が強いと氷が全部融解し、一方、加熱が弱すぎると氷が拡大することがわかった。 数値モデルを使い、室内実験を復元する試みもなされた。氷層には熱拡散方程式を、水層には熱対流の式を適用し、氷層と水層の境界の移動を記述する接続条件を適用した。水層下端と氷層上端の温度を固定して与えて時間積分を行うと、上下の温度差に対応して、氷層と水層の厚さの割り合いは異なるものの、安定した2層を復元することができた。しかし、温度境界条件の与えかたによっては、ほぼ全層が氷になったり水になったりする場合も存在することがあり得ることもわかった。ただ、これらのモデルはあくまでも分子粘性の効く小規模領域のものであり、現実の衛星の規模とは大きく隔たっていることに注意しなければならない。 現在、条件をさらに拡大した場合の数値モデル実験を行い、特に、熱対流の非線形効果の影響を詳しく調べており、これが終わり次第論文作成に入る予定である。
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