研究概要 |
1995年に発生した兵庫県南部地震では、多くの人命・財産が失われ、地震予知の重要性を改めて我々に示した。過去数十年で地震観測網が整備され、地震発生機構の研究も格段に進歩し、数年より長い長中期的な地震予知は進歩が得られつつあるといえるが、人々が有効にそなえられるような数日のスケールでの地震予知は実現していない。一方最近、地震発生前後に電離層に異常が発生するらしいことが広い周波数範囲での電磁波観測で明らかになってきた。しかしこれまでの観測はまだ例が極めて少ない上、観測条件が充分整備されておらず、科学的に解析し評価するには未だ不充分なデータと言わざるを得なかった。 このような背景から我々は、下部電離層の擾乱と地震との関係を解明するための信頼できるデータを定常的に出すことが、現時点で最も重要であると考えた。その上で初めて地震に伴う電離層擾乱や電磁波放射の有無とその有用性について、科学的な検討が可能になる。 1999(平成11)年度は、地震に伴う電離層擾乱の有無を観測することを目標とし、下部電離層の擾乱を検知しやすいVLF(Very Low Frequency=3-30kHz)帯とVHF(Very High Frequency=30-300MHz)帯電派の観測装置を製作し千葉県館山市に設置した(鷹野他:「地震関連VLF,VHF観測装置の建設状況」第13回SEMS(Seismic Electro-Magnetic Signals)研究会 東京6月8日;坂井他:「地震関連VHF帯電磁波の観測」地球惑星科学関連学会合同大会 東京 Sj-002 6月8日)。夏頃から開始したVHF帯FM放送電波の定常観測データを解析した結果、特定の型の変動を示すデータが出現した数日後に地震が発生する率が高いことがわかった。
|