既に採取されている中部日本の数地点の代表的な断層の断層粘土およびその母岩中の鉛、ウラン、トリウムの含有量の定量について、クリーンなスペース内での化学分離の必要のない放射化分析による測定法の精度についてまず検討した。中性子放射化分析法でトリウムは問題ないが、低濃度のウランの精度良い定量にはカドミニウムカプセル中の照射が必要である。立教原研ではカドミニウムカプセル中の照射は容易だが、平成11年度で閉鎖されてしまう。一方、平成12年度以降利用申請している日本原研ではカドミニウムカプセル中の照射が可能かどうかは現時点では未確定である。さらに鉛の定量法としての高量子放射化分析法は感度が低く、精度良い定量は難しい。従って、鉛同位体比のみならず含有量の定量についてもクリーンなスペースが必要で、含有量の測定には試料の溶液化と北大医学部の四重極ICP質量分析計による分析が必要という結論に達した。 次に、ICP質量分析計で測定するために酸による試料の溶液化が必要で、そのためのブランクの低減化と鉛、ウラン、トリウムの化学分離の必要性について検討することが課題となる。特に酸分解時の鉛のブランクを下げるにはクリーンな化学実験スペースを確保することが必要である。平成12年4月にこれまでの間借りの狭い実験スペースから新しく建設された実験室に移ることが確実になり、そこではクリーンスペースとダクト設備があるため、そのスペースで酸の蒸留、容器の酸洗浄と化学分離がクリーンエア中で可能なように、又平成11年度の予算内で製作できるようにクリーンドラフトを設計及び購入して、予備的にその性能について検討している。 さらに東電設計(株)の吉田鎮男氏(元東大理学部地質学助教授)と本研究に適した東北・中部日本の大規模な破砕帯を伴う活断層についての試料の採取について検討しており、平成12年度の始めに試料の採取を行う予定である。
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