研究概要 |
分子雲には鉱物・氷・有機物からなる星間塵が存在する。星間塵の有機物は原始太陽系星雲生成時に熱変成を受けるが、これまで有機物に着目した蒸発変成実験はおこなわれてこなかったので、モデル有機物を用いた蒸発変成実験をおこなった。 星間有機物の生成実験で得られた分析値などを参考に、モデル有機物を試薬を用いて調合し、それを出発物質とした。ここで、A : 分子雲で生成された有機物、B : 低密度雲で変成を受けた有機物とすると、A:B=10:3となる。試料約30mgを真空チェンバー内(10^<-6>Torr)で24℃から500℃まで加熱した(加熱速度1℃/min.)。また、一定温度で80時間加熱する実験もおこなった。蒸発残渣の質量測定後に、元素分析計を用いて元素分析(H,C,N)をおこなった。 蒸発残渣の質量の温度依存性が明らかになった。A : 分子雲で生成された有機物は80-100℃までに大部分が蒸発した。B : 低密度雲で変成を受けた有機物は180℃までに大部分が蒸発した。これらの蒸発温度を原始太陽系星雲のactive disk中心面の温度に換算すると、以下のような結論が得られた : 星間塵の有機物は2.3AUで大半が蒸発したと考えられ、2.3〜2.7AUでは低密度雲の有機物が、2.7AU以遠では分子雲起源の有機物が星間塵中に存在していたと考えられる。
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