研究概要 |
氷衛星などの天体の内部構造とテクトニクスについては不明な点が多い。氷天体の原材料物質は、水、メタン、アンモニアなどの化合物である。一方、原始的な隕石中にはケロージェン様の有機物が存在する。これらの有機物も氷天体の構成物質として無視できない。この研究ではダイヤモンドアンビル高圧装置に外熱用の白金のコイルヒーターを組み付け,高圧のもとで約700℃までの高温を発生し、この装置をX線回折装置に取り付け,高温高圧X線その場観察実験が可能になった.また、このダイヤモンドアンビル高圧装置と顕微ラマン分光装置、赤外分光装置を組み合わせて、高圧下におけるラマン分光や赤外分光の測定を可能にした。 このシステムを用いて、氷天体の内部の流動性を議論するために、氷のVIの高圧下での粒成長速度が測定され,その圧力依存性を調を明らかにした。また、氷天体内部を構成する可能性のある物質を含む系であるFe-H2O系、また原始的な隕石中の有機物に類似したケロージェンの高温高圧下での相転移と反応関係を実験的に明らかにした。これらの実験の結果.35GPaの圧力で700C以上で金属鉄と水が反応して,FeOとFeHが生ずることが明かになった.また、この反応は5GPa以下の低圧では生じない。この反応は現在のプレート内部とともに,初期地球や始源的な小天体内部の温度圧力条件で生じることが明らかになった。この反応によって、氷天体のコアを作る金属鉄には水素が固溶している可能性があることが明らかになった。また、始源的隕石中の有機物のモデルとしてのケロージェンは常温で少なくとも9GPaまでは安定であり、1.5GPaで250℃で分解することが明らかになった。したがって、タイタンのような氷衛星内部ではKerogen様の有機物は安定に存在し得る。
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