研究概要 |
超短パルスレーザーを用いたX線構造解析を目的とし、フェムト秒レーザーの安定運転、また、分子クラスターからのX線発生、レーザー光の集光の実験、両方を念頭におき、C_<60>、ベンゼンのクーロン爆発の実験を行った。これらはJ.Chem.Phys.など3報、日本語解説に1報、報告した。 1.超高出力のフェムト秒レーザーの安定運転 1.1 フェムト秒チタンサファイヤレーザー チタンサファイヤレーザー3段多重増幅レーザーを改良しつつ、用いた。(大阪大学レーザー核融合研究センター、研究分担者、阪部グループ)チャーブパルス増幅、最後にグレーティングペアによる圧縮等最先端技術を駆使し、高い強度で安定運転ができるようにした。(最高88fs,500mJ,10Hz)また、ビーム配管は真空パイプとし、長距離(30m)をビームが歪まないように伝搬できるようにした. 1.2 どこまで集光できるか 高い効率のX線発生効率の鍵は、レーザーの集光強度である。軸はずし放物面鏡を計画しているが、今年度もアクロマティックレンズを用いた。照射レーザーエネルギーは120mJ,パルス幅120fsのとき、集光強度を8×10^<16>Wcm^<-2>と推定した。ビームパターンの実測、Xe多価イオンの検出によりこれを確かめた。 2. C_<60>、ベンゼンのクーロン爆発 ベンゼン、C_<60>などの大きい分子にレーザーを集光照射すると、クーロン爆発が起き、そのまえにX線変換が期待できる。表題の分子を10^<16-17>Wcm^<-2>のレーザー強度調べた。両方から、1〜4価の炭素イオンが観測された。多価の炭素イオンはレーザーの偏光方向に強く放出された。計算器シュミレーション(MD)により、観測値の運動エネルギー分布をほぼ再現でき、炭素原子間での電子ホッピングが示唆された 今後はC60、ベンゼンの代わりに金属クラスター、金属錯体をターゲットとし、X線発生とその性質を詳しく調べる計画である。
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