芳香族化合物がπ配位した新規銀錯体の合成、構造及び物性:新しい銀錯体化学の展開

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11874092
• 研究機関: 近畿大学
• 研究代表者: 宗像 恵 近畿大学, 理工学部, 教授 (80090942)
• キーワード: 多環式芳香族化合物 / 芳香環の重なり / 二層構造 / 錯体集合体 / 伝導体 / 有機金属化合物 / π-π相互作用 / 銀錯体

研究概要

[2,2]-paracyclophaneの発見以来、約半世紀にわたって、これをプロトタイプとしてベンゼン環を縦方向に繋いだ多層構造化合物の合成研究がなされているが、現在までのところ僅か7層構造のシクロファン型の合成に成功しているにすぎない。一方、我々は多環式芳香族化合物がAg(l)にη^2配位した全く新しいタイプの多層構造(W型サンドイッチ構造、2重ヘリックス構造、トリプル・デッカー構造及びマルチ・デッカー構造)の構築に成功しているが、本研究では、全く新しいタイプのダブル・デッカー(二層)構造のAg(l)π錯体集合体の合成に初めて成功した。すなわち、benzo[ghi]perylene(bper)の二核Ag(l)錯体[Ag_4(bper)_4(ClO_4)_4](toluene)(1)である。1は二分子のbperを2個のAgが架橋した二層構造を形成しており、二層構造のAgはさらにClO^-_4で架橋された一次元鎖を形成している。1ではbperによるπ-π相互作用が分子内(3.38Å)、分子間(3.47Å)ともに存在し、これによりカラム状芳香環スタッキングを形成し、錯体全体としては二次元構造をとっている。しかも、bperは分子内π-π相互作用のため内側に反っており、分子の中央部分で約0.07Åbentしている。1の微結晶をペレットにして、二端子法で室温で電気伝導率(σ)を測定したところ、注目されることに、2.1Xl0^<-2>Scm^<-1>という極めて高い伝導機能を示した。さらに、1はg=2.003に有機ラジカルのESRシグナルを与え、Ag(l)からbperヘ、わずか(0.2%)ではあるが電子移動していることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] 宗像恵: "Silver(I) Complex Assemblies with Non-planar Aromatic Compounds"Inorganic Chemistry. 38・25. 5668-5673 (1999)
• [文献書誌] 宗像恵: "Mobility of Silver(I) Ions Around the Propeller Ligand,Hexaphenylbenzene in Silver(I) π-Complexes"Inorganic Chemistry. 38・25. 5674-5680 (1999)
• [文献書誌] 宗像恵: "Cationic Tetrasilver Complex Hexaphenylbenzene"Inorganic Chemistry. 38・7. 1376-1477 (1999)
• [文献書誌] 宗像恵: "Construction of Metal Sandwich Systems Derived from Assembly of Silver(I) Complexes with Polymeric Aromatic Compounds"Journal of The American Chemical Society. 121・21. 4968-4976 (1999)
• [文献書誌] 宗像恵: "Synthesis and Structures of Dinuclear Rhodium(I) Complexes and 1-D Zigzag Chain Rhodium(I) Coordination Polymers Bridged by Rod-like Bidentate Nitrogen Ligands."Journal of Chemical Society,Dalton Transactions. 121・23. 4357-4362 (1999)
• [文献書誌] 宗像恵: "The Role of Hydrogen-Bonding Interractions in Stabilising Trigonal Planar Copper(I)in Cu(BF_4)-Pyridazine-Nitrile Systems"Journal of Chemical Society,Dalton Transactions. 121・23. 4251-4259 (1999)